プリズム

このまちの未来について、風間しげきが思うことを綴っていきます。皆様のお声もぜひ、お聞かせください。

BayPRESS 856号 /2018年11月10日発行

将来への備えは十分か 子どもたちのトチの実(中)

 先日、東京の早稲田講堂で開かれた「全国地方議会サミット」に参加した。目的は野田聖子総務大臣の「地方創世の展望」と題した特別講演を聴くことだった。残念ながら大臣は国会日程により急遽欠席となったが、安田充総務省事務次官が議員に意識の転換を促した。

 「2040年、人口減少に加え高齢者人口がピークを迎え、人口減少による労働力不足と高齢化で行政の運営が最も厳しい局面を迎える」。そして、「東京を含む地方自治体が崩壊する可能性がある」。 

 たとえば社会保障給付費、現在およそ121兆円なのが、2040年には190兆円、今の1.6倍に膨れ上がる。

 安田次官は「地方自治体は、今の半数の公務員で行政を支える必要があり、自治体がそれぞれ個別にフルセットの機能を持つのではなく、いくつかの市町村が圏域を作り、施設などの役割分担を進める必要がある」と指摘した。

 静岡市における人口のピークは1990年の73万9千人。2040年における人口推計は25%減の55万9千人。その上65歳以上が37%を占める。

果たして将来の備えは十分か。 次号は田辺市政が計画を進める大規模建設事業の規模と進捗状況を見ていく。

BayPRESS 855号 /2018年10月27日発行

将来への備えは十分か 子どもたちのトチの実(上)

 宋に狙公という猿好きがいた。家計が厳しくなり餌のトチの実(どんぐり)を一つ減らそうと考えた。翌朝、「これからは朝に三つ、暮れに四つやる」と言ったら、猿が「少ない」と怒ったため「朝に四つ、暮れに三つにする」と言い直したところ、猿はとても喜んだ。

 中国の故事「荘子」の一節だ。「目先の違いに気を取られ、結局は同じことであることに気づかない」ことのたとえ。

 人口減少は国難ともいわれる。税収は減り、高齢者福祉や公共建設物の維持修繕費の増加など財政状況は今後一層厳しくなる。将来に対する有効な対策と備えが必要なのは、国も地方も同じだ。

 安倍首相が消費税率を来年10月1日に現行の8%から10%に引き上げる方針を表明した。 
 静岡市では田辺市長が清水庁舎、海洋拠点施設、歴史文化施設、静岡市民文化会館の建て替え等、大規模な建設投資を行う方針を表明している。

 いずれも「将来に備える」ための政策だという。この国、このまちを担う子どもたちのトチの実はそれで本当に増えるのか。

 朝三暮四はまた、「口先で人をだます」という意味もある。子どもたちのトチの実を貪ることがあってはならない。

BayPRESS 854号 /2018年10月13日発行

地域特性に応じ備えを 大災害が複合的に発生

台風24号の影響で停電。外は漆黒の闇。荒れ狂う風が唸りながら家を叩いてくる。心から「怖い」と思った。台風一過。未だに断水や停電で不便な生活を強いられている市民も多い(3日現在)。記憶が褪せなうちに、すべての家庭で今一度、自然災害について考え直す機会にしてはいかがだろうか。

 1959年に発生した伊勢湾台風(死者行方不明者5,098人)に代表されるように、かつては災害といえば台風だった。それが1995年に発生した阪神淡路大震災(同6,437人)、2011年に発生した東日本大震災(同22,233人)、そして平成30年7月豪雨(同230名)等によって、地震による液状化や津波、豪雨による氾濫、地滑りへの対応も急がれるようになった。

 「想定を超える大規模災害は今後も必ず起こる」と強調する専門家は多い。
 南海トラフ地震の30年以内地震発生確率は70%から80%に高まった。地球温暖化の影響で豪雨や台風などの災害も拡大していくという。

 特に最近、多くの人が命を落とす大規模災害が複合的に連続して発生している。住んでいる地域特性を把握し、できる限りの備えをしておくことが大切だと思う...

BayPRESS 853号 /2018年09月22日発行

教員増やして 特別支援学級の悩み

 市立小学校の特別支援学級を視察した。自閉症・情緒学級に通う児童数は8名。主要4教科のうち、社会と理科は通常学級に通うが、国語と算数は1年から5年の児童8名が一つの学級で授業を受けていた。

 同校の校長は「子どもたちには個性、能力の違いもあり、学級担任と支援員各1名では、潜在能力を発揮させる十分な指導ができない」と顔を曇らせる。
 
 教員や支援員の負担も重く「児童数が4名を超えたら、もう一名教員を増やしてほしい」との現場の願いは切実だ。

 市教委では、文科省が特別支援学級の児童8名に教員1名と定めてることを理由にあげ、同省へ基準緩和の要望を続けていくとしているが早急な対応は難しい。

 しかし、給与の国庫負担分等を含め、市が全額負担することを決めれば教師の追加配置はすぐにでも可能なはずだ。

 現在、市立130の小中学校中、72校に418の特別支援学級がある。通学している児童生徒数は966名。

 この5年間で知的、自閉症・情緒障がいの子どもたちの数は、増加傾向。弱者に優しい市であって欲しい。

BayPRESS 852号 /2018年09月08日発行

「静岡市はいいねぇ」 郷土思う気持ち大切に

「さくらももこさんが亡くなりました。」会議が終わり、携帯に残されていたメッセージは知人の新聞記者からだった。 「ご本人と関係のある方のコメントを至急取りたいのですが、どなたか…」聞き終わらないうちに、言いようもない寂しさを感じた。

 清水区民の多くが同じ気持ちだったと思う。まるちゃんの暮らしを、とても身近に感じながら、同郷のさくらさんの活躍を誇りに思っていた。

 岡小学校の地域公開授業で小学校3年生の子供たちに「まるちゃんの町は大洪水の巻」を引用し、七夕集中豪雨の話をした。入江小学校への通学路にあった歩道橋の上から見た風景も、写真に収め子供たちに見せた。さくらさんが好きだったといわれる景色だ。

 視察で県外に行くときには、議員の多くが「静岡市はいいねぇ。さくらももこ」と書かれたイラスト入りの名刺を持参した。かわいいイラストは久能山東照宮、模型の世界首都、さくらえび天日干し…、視察先で必ず話題になった。

 さくらさんが愛した清水、郷土を思う気持ちを大切にしたいと思う。心からご冥福をお祈り致します。

BayPRESS 851号 /2018年08月25日発行

借金残高は増加傾向に 建設事業と住宅ローン

市が今後、立て続けに建設を予定している、市役所新清水庁舎や水族館を核とした海洋拠点文化施設(清水区)、歴史施設や文化会館の建て替え(葵区)などは、いずれも数十億から百数十億円規模の経費が見込まれている。
 
大型建設事業などを行う際に、市は資金調達のために借り入れを行う。市の借金が増えると、将来の負担が大きくなり、時代の変化に伴う出費を工面するのが難しくなっていく。

住宅ローンと同じ。家を建てる時、一家の将来にわたる収入や子供の成長に伴う教育費、急な病気や家屋の修理なども十分に考慮するはずだ。

人口も税収も右肩上がり、高度成長期ならともかく、これからこの街を担う子どもたちの肩には、人口減少に伴う税収減、高齢者福祉に対する費用負担増などが重くのしかかる。

静岡市の市債(借金)の残高は平成28年度決算で4482億円。増加傾向にある。

私たちが将来にわたって本当に必要とする規模、内容の施設なのか。負担はどうか。

全国の市町では、大規模建設事業を見直す取り組みが進んでいる。

BayPRESS 850号 /2018年07月28日発行

集中豪雨で大谷放水路 先憂後楽は必要な資質

西日本豪雨による死者は20日現在で219名。亡くなられた方々のご冥福と、今なお避難所に身を寄せている方々が、一日も早く日常の生活に戻れるよう心から祈りたい。

1974年静岡市。7月7日から8日にかけて降った雨は508ミリを記録した。

高校一年の夏だった。雨続きだった野球部の合宿が終わり、友人たちと七夕見学に出かけてた。突然降りだした雨は傘が差せないほど激しくなった。巴川の堤防をこえた濁流が町に流れ込む光景を目の当たりにした。

七夕集中豪雨。この災害で27名の尊い命が失われた。

1978年、巴川は全国初の「総合治水対策特定河川」に指定され県と市は大規模な河川改修工事に着手した。

大谷放水路。総事業費553億円。七夕豪雨から25年をかけ1999年に完成。葵区古庄付近で巴川から分流し、出水時には毎秒150トンの水(約2秒で25メートルプールを満たす水量)を駿河湾に逃がす。過信は禁物だが成果は大きい。

「先憂後楽」…先見力を持って誰よりも先に危機を察し、後の平安を見て楽しむ。リーダーに必要不可欠な資質だ。