プリズム

このまちの未来について、風間しげきが思うことを綴っていきます。皆様のお声もぜひ、お聞かせください。

BayPRESS 934号 /2022年06月25日発行

「おやつ騒動」と「怒る権利」 今も続く?「怪奇な民主時代」

 TBS系列で放映された「世界ふしぎ発見」、ご覧になりましたか。テーマは「いざ!明日誰かに伝えたい鎌倉」。 私が伝えたいのは、番組内で取り上げられた「おやつ騒動」。

 鶴岡八幡宮の背後にある緑の森が「御谷(おやつ」。高度成長期、ここで一大騒動が勃発します。1961年、聖地とされてきた御谷の森が土地開発の危機にさらされます。「神社を見下ろすような場所に家を建ててはならない」として市民が立ち上がり5日間で集めた署名は約2万人。

 運動の中心を担ったのが作家の大佛次郎(おさらぎじろう64年文化勲章受章)。神奈川新聞に「怒る権利」と題した一文(以下要約)を寄稿します。
 
「いい加減な民主時代に入り威張るやつらは威張りだし、腕力、金力、政治的実力の時代になった。いつも人が知らぬ間に仕事が進められ、既成の事実として力あるものが居座る。それが民主時代だとしたら怪奇である」。

 市民はブルドーザーの前に立ち開発を止め、この運動が古都保存法の制定につながりました。60年も前の事ですが、「怪奇な民主時代」は今も続いているような気がします。

BayPRESS 933号 /2022年06月11日発行

清水庁舎は築39年で建替え? 静岡庁舎は築37年で長寿命化

 清水庁舎の整備方針を決める検討委員会の初会合が開かれ、市から移転建替えや大規模改修など五つの案が示されました。

 「耐震性能不足と老朽化で一刻も早い整備が必要」とされた清水庁舎は築39年。 県内はもとより全国的にも、この築年数で移転新築に踏み切った例はないようです。静岡庁舎は築37年で長寿命化の方針が決まっています。

 両庁舎は設計会社も建設会社も同じ、同じ耐震設計思想で建てられ、外見も同じ双子の関係。清水庁舎の状況が深刻なら、より高層で防災拠点の本丸となる静岡庁舎はなおさら深刻なはずです。

 清水庁舎は東海大地震を想定して83年に完成。構造的には新耐震設計で、地下階には防潮扉を、またメインの電気施設や非常電源は4階に設置されています。築30年を超えればエアコンなど設備の老朽化で、整備更新に一定の費用が必要になるのは当然の事。コンクリートの検査結果も良好。移転建替え案の根拠そのものが脆弱です。

 清水庁舎を解体し桜ヶ丘病院を移転する計画はなくなりました。適切な耐震診断を行い、必要な改修をしながら、大切に使い続けていくべきだと思います。

BayPRESS 932号 /2022年05月28日発行

生活関連優先し海洋は凍結 ウクライナ危機で物価高騰

 牛や豚の飼料の高騰で肉類も値上げ、大好きなカップラーメンも同様、原油価格が上がれば燃料もあがり海産物だって値上がりへ。コロナの感染拡大への不安が薄らぎつつある中、ロシアのウクライナ侵攻による物価の上昇は食卓を直撃しています。

 景気の先行きへの不透明感は企業の間でも高まっています。特に、関連企業のすそ野が広い建設業界では、中国経由の木材がストップし、国産材も合板も値上がりするなど危機感を募らせています。

 このような状況下で、行政の公共事業も入札の不調が目立っていますが、市民生活に密着する事業の遅滞は許されません。道路橋梁や上下水道の整備、教育や福祉等事業については、資材単価の見直しや工期の十分な確保などが急務となっています。

 一方、ここで気になるのが海洋文化施設の建設事業。総事業費240億円、このうち市税負担は170億円。事業規模が大きいことから、建設や運営に係る予算への影響が懸念されます。こちらは資材単価の見直しを…、とはいかないでしょう。一旦凍結し、状況を見極める必要がありそうです。

BayPRESS 930 931号 /2022年04月23日発行

市民判断とのねじれはなぜ? 議会での多数決は民主主義か

 なぜ、静岡市政は頑なに市民の声を聞こうとしないか。また、『自分たちの事を決めてくれる人』が集まる「議会の判断」と、世論調査などによる「自分たちの判断」が異なるのはどうしてでしょう。

 『執行機関が強力であることは(中略)行政機関は当事者である住民の声を聞く必要がないばかりか、その声は「民主的プロセス」を阻害するノイズにさえ扱われてしまう』 (多数決を疑う 社会的選択理論とは何か=坂井豊貴著 岩波新書)

 「市民の代表たる議会の多数決による賛同」があれば、例えそれが市長の独善的な判断であっても「民主的手続きを経た」という外套をまとうことができます。

 問題は民主的プロセス。議会判断と民意が異なる原因の一つが会派拘束。議会で集約された議員の意思は「市民の意向」か、それとも所属する「会派の意向」なのかという点です。議員の意思が真に市民に忠実であれば、集約された「議会の判断」は「市民の判断」と大きく異なるはずがありません。

 国政と違い多様な市民市民生活に密着した市政の場、会派によって足並みが揃う事のほうが不自然だと思いますが、いかがでしょうか。

BayPRESS 929号 /2022年03月26日発行

海洋文化施設以上の波及効果 スタジアム建設は公民連携で

市議会2月定例会が閉会。海洋文化施設の建設に係る事業費170億円含む議案が、賛成多数で可決されました。

 議案にはサッカースタジアム建設に関わる事業費1200万円も含まれ、事業手法の調査検討などが行われます。

 田辺市長は会見で手法を問われ「公民連携の形でのぞみたい」との考えを明らかにしています。

 「公民連携」のモデルとして建設されたのが「パナソニックスタジアム吹田」、収容人員は4万人。

 吹田市は「建設費を寄付金だけで賄う」との条件で建設用地選定などを支援。総建設費140億円は、経済界からの寄付99億円、個人からの寄付6億円、助成金35億円で賄われました。

 新スタジアムの候補地については「ENEOS遊休地が有力」とする田辺市長。富士山、駿河湾、駅直結。コンサートなど、様々なイベントが楽しめる複合スタジアムができれば宿泊、飲食、買い物など、海洋文化施設以上の波及効果が期待できるはずです。

 市財政は今後、硬直化が一層進みます。 期待を寄せる経済界の寄付だけで建設できるのか。市は不足分を補う意思があるのか。市の姿勢が問われています。

BayPRESS 928号 /2022年03月12日発行

財政硬直で迫られる選択と集中 海洋拠点施設かスタジアムか?

 凍結されていた海洋拠点施設建設事業が動き始めました。

 展示コンセプトは駿河湾。入場料は大人1500円、子供料金750円。入館者数は初年度67万人、15年間で700万人を見込んでいます。 新年度予算には入館料収入を除く15年間の運営費70億円(年間4億6千万円)と、建設費100億円の計170億円を計上。建設費はマリナートの約76億円を抜き合併後最大規模。

 経済界の強い要望もあり、「公共投資を呼び水に民間投資を促す」と意気込む田辺市長。しかし、周辺開発に係る民間投資の計画は不透明。また、大規模改修等、長期的な収支予測の説明も不十分です。

 本市の財政は今後、人口減少にともなう税収減と、福祉関連費用の増大により硬直化が懸念されます。加えて、歴史博物館(46億円)、静岡市民文化開館改修費(160億円)など、大型建設事業がほぼ同時にスタート。新規事業には選択と集中が強く求めらます。

 清水区ではサッカースタジアム建設計画も始動。水族館との複合化を含め、どちらに財源を集中するのか。

 現下の社会情勢も踏まえ、慎重な検討が必要です。

BayPRESS 926 927号 /2022年02月26日発行

ポンプ場と文化施設で法令違反 揺らぐ信頼 倫理規範はだれが

 市民や企業に対し法令順守を求める市役所で、法令違反が相次いでいます。

 総事業費約70億円。清水区の浸水対策として工事が進む高橋ポンプ場建設計画では、事前着工など2度にわたり法令違反が発覚。また62億円で建設が進む歴史文化施設でも同様の法令違反。いずれも追加工事の発生や、完成時期が遅れる可能性が出ています。

 こんな時こそ、行政のトップとして倫理規範を説くべき市長ですが、来年の市長選挙で有権者になる高校生に、本人の似顔絵入りマスクを配布したことが全国ニュースに。さらに、職員には「会食は家族や日頃行動をともにする少人数に限る」としながら、本人は県外の知人等と飲酒を伴う会食で感染。意識の緩みが指摘されています。

 開会した2月定例市議会冒頭、田辺市長は施政方針で「市民の命と暮らしを守るため、引き続き感染防止や経済回復に全力を尽くす」と意気込みました。

 相次ぐ法令違反と規範意識の緩み。ネット上には多くの批判が寄せられ、市政への信頼が大きく揺らいでいます。

 次回は、日の出地区に建設予定の水族館建設事業を取り上げます。