プリズム

このまちの未来について、風間しげきが思うことを綴っていきます。皆様のお声もぜひ、お聞かせください。

BayPRESS 917号 /2021年08月28日発行

コロナ対策の差は国民性の差 相互信頼で大胆な政策を断行

8月15日放送の読売テレビ「そこまで言って委員会」。コロナ対策がうまくいっている国トップ5を元厚生省官僚の豊田真由子氏が分析。

 5位はPCR検査や対策アプリを早期に構築した韓国。4位はシンガポール、ワクチンの接種率が高く感染者数を抑え込んでいる。3位は情報戦略など国家の危機管理体制への評価で台湾。2位はニュージーランド、少人数の感染でもロックダウン。1位はノルウェー、感染が拡大した欧州において一貫して感染を抑制。国民の政府に対する信頼度が高いことも評価した。

 台湾は蔡 英文、ニュージーランドはジャシンダ・アーダーン。ノルウェーはエルナ・ソルベルグ。いずれも女性がリーダーだが、能力に性差はない。違いがあるとすれば男女や年齢の差別なく、能力の高い人材をトップに選ぶことができる国民性にあると思う。

 自らが選んだリーダーを信じ、リーダーは国民を信じるからこそ大胆でスピード感のある政策が断行できる。

 日本はどうか。対策は上位にない。リーダーへの支持率は低下の一途。事が起きるたびに不満を言っているだけでは仕方がない。

BayPRESS 915 916号 /2021年07月24日発行

問答無用で危うい市民の命 静岡市の常識は世の非常識

 6月定例市議会が閉会した。

 桜ヶ丘病院の移転計画について、市に説明責任等を求めた市民団体の請願書は不採択となり、創生静岡より提出された、移転関連予算の減額を求める修正動議も否決された。

 田辺市長は、桜ヶ丘病院の移転に関する総括質問にも一切答えなかった。

 市長は「一日も早く清水区の不安定な医療提供体制を改善することが大切」と話すが、「危険な場所への移転」を肯定する理由にはならない。また、「清水は海とともに発展してきた」ことも事実だが、商業施設と病院を同じ賑わい施設として位置付ける考えには賛成できない。

 建て替え時により安全な場所への移転を考えるのが世の常識なら、静岡市の常識は非常識。しかも、市が津波浸水深想定区域への移転の前提としてきた、ヘリポート設置は病院側に断られ、防潮堤の完成時期も不明、加えて、津波発生から3日間とした道路復旧の期間も根拠が無いに等しい。

 議会は議論するところ。議論の中で問題点が浮き彫りになり、対策に知恵を出すことで政策は磨かれていく。問答無用、議会も追認では市民の命が危うい。

BayPRESS 913 914号 /2021年06月26日発行

桜ヶ丘病院の移転と説明責任 問われる田辺市長の政治姿勢

 静岡市議会に市民団体から請願書が出された。
 請願者たちは、新病院の機能、災害医療における同病院の位置づけについては未だに不明確だとして、田辺市政とJCHOに対し説明責任を果たすよう求めている。

 昨年12月、田辺信宏市長は、市民に何ら説明がないまま、JCHOの尾身茂理事長と「桜ヶ丘病院を清水駅東口公園に移転する」基本協定を結んだ。

 「市立病院でないのだから、勝手にどこにでも移転すればよい」と言うわけにはいかない。移転先は清水庁舎が移転することになっていた、清水区の一等地。しかも、病院立地には相応しくない津波浸水想定区域。

 都市計画の観点からも、災害医療の観点からも市民に十分な説明が必要な事は言うまでもない。加えて、救護病院の指定や役割、ヘリポートの設置など、市当局のこれまでの説明と異なる報道があり、市民の間に大きな不安が広がっている。

 桜ヶ丘病院は築60年を超え、耐震性能が危ぶまれている、早急に移転が必要なことは理解できる。 問われているのは田辺市長の政治姿勢そのものだ。(続)

BayPRESS 911号 /2021年04月24日発行

リニア大井川流水問題で国交省  「最初に結論ありき」は本市でも

 映画『記者たち衝撃と畏怖の真実』。
 イラク戦争の大義名分となった大量破壊兵器の存在に疑問を持ち、真実を追い続けた記者たちを描いた実録ドラマ。

 大手新聞社が大統領の発言を信じて報道する中、地方紙の記者たちが疑念を抱き取材を開始する…。
 正確な情報に基づいた上で結論を出したのか。それとも、まず結論ありき。都合の良い情報を元に議論を行ったのか。

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流水問題。17日、18日の両日、静岡新聞が朝刊一面で報じた。
 『平年雨量超す年を「渇水年」』『国交省会議でJR説明』『国交省会議中間報告案 「県性格性欠く」』…。JR東海は取水制限の無い年を渇水年と説明し「渇水季に流量は維持されると結論付けた」(同)。

 川勝知事はリニアそのものに反対ではない。「自然への影響を正確に検証しないと取り返しがつかない事になる」と話す。国交省会議は最初から結論ありきだ。

 静岡市も同じ。東静岡駅のアリーナ、新清水庁舎、海洋文化施設の建設、そして、桜ヶ丘病院の移転、現清水庁舎の耐震診断。いずれも、正確な情報に基づいた上での方針決定とは到底思えない。

BayPRESS 919号 /2021年04月10日発行

巣立ちの春にそれぞれの想い 「貯金通帳」と「空の巣症候群」

 巣立ちの春。知人の娘さんが大学進学で清水を離れることになった。お母さんは娘さんに「家計も厳しい。今後は何かあっても親を頼らないように」と通帳を手渡した。幼稚園に入ったころから、娘さんと一緒に銀行に行った。頂いたお年玉やお祝いは全て貯金した。

誰から頂いたものか、小さな文字で名前を記した。多くの方々に育てられた感謝の気持ち。そしてお金の有難さ。お母さんは「子供たちが一日も早く自立することが、一番の願い」だと話した。

 我が家に生まれた三羽の雛。二羽はそのまま大きな雛として今も巣の中にいる。その昔、真ん中の一羽が進学で県外へ巣立った時には心にぽっかり穴があき、なにも手がつかなくなった。「空の巣症候群」…。

 放っておいても子供は勝手に育つという人もいる。各家庭によって子や親の性格、育て方も異なる。
 ただ、一つ言えるのは、子を思う親の想いはいつまでも変わらないということ。

 巣立ちの春。特に親元とを離れる若鳥達には、親への感謝を忘れず、自由に大空を飛び、多くの出会いを通して経験を積み、大きく成長し帰ってきて欲しい。

BayPRESS 909号 /2021年03月20日発行

住民監査請求は核心に至らず! 耐震性能不足は移転の一要素?

 現清水庁舎の耐震診断に間違いがあるとして、田辺信宏市長に対し耐震診断の委託費など約8千6百万円の返還を求めた住民監査請求の結果が出た。

 まず、耐震診断について、データー等が欠落しており正確性を欠くと指摘した部分は、時効を理由に却下。市はデータの欠落は認めたものの、疑惑の核心には至らなかった。

 次に、この耐震診断を根拠に、新庁舎の移転計画が進められらたと指摘した部分については棄却。因果関係はないとした市の主張が通った。

 監査委員は、耐震診断は移転計画の背景、要素の一つに過ぎず、移転計画の最大の理由として捉えることは妥当でないと判断。我々が間違いを指摘した、耐震診断の結果と移転計画の因果関係を否定した。

 新清水庁舎の移転計画は、現清水庁舎の耐震性能に問題があることが最大の理由と聞いていたが、聞き間違いか。

 現清水庁舎は構造的には新耐震。しかも築38年での移転解体という計画は全国でも前例がない。

 街づくりや賑わいのための移転計画だとしたら、その事業に費やされた税金を市民は当然だと受けいれるだろうか。

BayPRESS 908号 /2021年03月06日発行

被災地を覆った埃と匂い このまちの3・11はいつ

 10年前の4月20日深夜、静岡県ボランティア協会のスタッフ達と上野駅から東北へ向かう高速バスに乗った。目的地は後方支援基地、遠野市の災害ボランティアセンター.ここを拠点に、22日まで釜石市、大槌町、山田町を回った。

 車窓からまちの惨状がはっきりと見えてくる。潰滅と言う言葉以外に表現のしようがない。ため息もをつく気力もなくなっていく。

 震災から一か月。海底の土が削り取られて黒く濁った津波は埃となり、かすかなヘドロ臭とともに被災地を覆っていた。

 どこの市町でも、生存者の確認に追われていた。死者1万8131人。行方不明者2829人。

 想定される南海トラフ地震は東北大震災の被害を大きく上回る規模になる。

 いつ起きるのか。現代科学でははっきりと予想できない。

 ただ、「今日一日、地震が来なかった」と安堵の裏で、地震エネルギーは少しずつ蓄えられ巨大化している。

 自然への畏敬と畏怖、そして命の大切さ。多くの人たちが、命を賭して残した教訓は絶対に忘れてはいけない。

 このまちの3・11 は、明日かもしれない。